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英国の新聞生き残りバトルで生じたニッチに登場『i(アイ)』
  日本のように新聞の配達網がなく、基本的にはキオスクなどで毎朝購入するシステムの英国の新聞。『ザ・タイムス』やウィキリークスで日本でも知っている人が増えた『ザ・ガーディアン』などの高級紙から、ゴシップとヌードで満載の大衆紙『ザ・サン』『デイリー・ミラー』(前回のエントリー参照)などまで種類は多い。

 けれど、パリの『Metro』紙に始まったフリーペーパーがロンドンに何紙も登場し、インターネットで記事の大半が無料で読めるようにもなり(タイムズは昨年有料化)、新聞社の経営はかなり苦しくなっている。ロンドン限定の夕刊紙として歴史のあった『イブニング・スタンダード』紙はこの圧力に負けて無料化してしまった。

 とくに高級紙『ザ・インデペンデント』は相当苦しそうで、昨年にはロシアの富豪に『イブニング・スタンダード』紙とともに買収されたばかり。以前は24万部あった販売部数が今は18万部に落ちているという(しかもそのうちの6万部は無料配布)。ネット版も、かなり大胆に動くバナー広告なども入れて売上に必死の様子が伝わってくる。コラム陣が主張が強く全体的に若い印象で好きな新聞のひとつなので心配している。

 苦肉の案として、昨年10月にわずか20ペンス(30円)の『i(アイ)』というタブロイド版を創刊した。『ザ・インデペンデント』の頭文字をとった弟分で、本紙のダイジェストのような作りになっている。編集長も同じだ。

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いわゆるタブロイド紙サイズ、56ページあって、ひとつひとつの記事は短めだがそれなりに読み応えもある。忙しい朝にトピックをつかむのにはむしろいい感じ。本紙が1部1ポンド(134円)に対して、これは20ペンス(30円)。

 スタートしてほぼ3ヶ月、最近はテレビ広告を打ち、ちょっと積極的な攻勢に出ている感じなので初めて買ってみた。

 最初の数ページは、街頭でアルバイトが配布している無料新聞に似たカラフルなレイアウト。親しみやすさを出すためか芸能人の写真などもわざと多めにいれている。それでも政治・経済・国際などの大切な見出しはだいたい載っていて、丁寧にわかりやすいミニ解説までついている。無料新聞はゴシップばかりと辟易しているけれど、高級紙はどうせ読みきれないし……という通勤者にはちょうどよさそう。トピックによっては食い足りなさもあるけれど、思いがけずよかった。iPadアプリも出ている

 ただ問題は、無料新聞の浅い内容に不満を持ちながらもそれに慣れてしまった通勤サラリーピープルが、わざわざキオスクに立ち寄って新聞を買う手間を払うかだと思う。20ペンスはあまり障害にならないだろうが、無料新聞は歩いていると渡してくれたり、改札の横に積み上げてあるので、とにかく手に取りやすい。

 この号の編集長コラムで、「僕の親はゴシップだらけの『ザ・サン』しか買わないけれど、『i』は人々が知るべき記事が乗っていると思う」と13歳の少年がメールを送ってきて嬉しかったとあった。イギリスはじつは『ザ・サン』がダントツで売れている日刊紙で、それらを読んでいる層と、高級紙を読んでいる層がまさに階級社会的に分断されすぎているのが問題だとひとりのガイジンとして常々感じているので、その間をつなぐ可能性がある『i』が成功してくれたら、とは感じている。日本も新聞離れが嘆かれているけれど、こんな試みを積極的にやってみてもいいかもしれない。

 iPadアプリは最初に5部まで無料で読め、以降は10部で1.79ポンド(240円)、20部で2.99ポンド(400円)。世界中で購読できるとのことで、英語を勉強する人にもよさそう。iPadユーザーの方はお試しあれ。
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